今年も「ごんぎつね」の授業に入った。
この教材は4年生というタイミングで出会うのがふさわしい。
4年生といえば思春期の入り口。
「10歳の壁」という言葉も最近ではよく聞く。
4年生ぐらいから主に学習面で抽象的な思考を要する場面が増えることから、それらについていける子とそうでない子に分かれる傾向があり、その間に立ちはだかるものを「10歳の壁」と呼ぶ。
最近では生活環境の変化(学童が終わる、中学受験を意識して塾での学習が忙しくなる、など)や自我の発達などにより、心理面や友達関係で大きくストレスを抱えている状態を「10歳の壁」と呼ぶこともあるようだ。
「ごんぎつね」は中心人物・ごんが自分と同じ境遇の兵十に心を寄せていくが思いは通じず、兵十に銃で撃たれてしまう悲劇だ。視点人物がごんであるため、読者である子供たちはごんに共感しながら読み進めることになり、結末ではごんをかわいそうだと感じたり、兵十を敵対視するような感想をもったりすることが多い。
しかし兵十ら村人たちからすると、ごんは大切な作物を荒らす憎ききつねであり、こと兵十からしてみれば川で採った魚を投げ捨てられた相手だ。作者は結末の場面で視点人物をごんから兵十に移している。ごんが視界に入って来るやいなや銃を手に取った姿から、ごんに対する思いの深さが読み取れる。
「どちらの気持ちも理解できる」のに、結末は何ともやるせない。予定調和ではない結末に、読者である子供たちの心は揺れたまま余韻を残して終わる。
視点人物であるごんに同化して読むことは容易だが、視点を兵十や村人たちの側に移して心情理解できるかどうか。そして予定調和でない悲劇をどう受け入れるか。
子供の学校生活でも、相手(友達)の痛みを想像し、「そんなに苦しい思いをしていたのか」「本当に自分は相手に悪いことをしていたな」と心から思えたとき、つまり視点の転換ができたときに凍っていた心がすう~っと溶けていき、新しい展開が生まれる。(この状態がU理論でいう「プレゼンシング」である。)
ごんぎつねを学ぶことが相手理解や社会理解を深め、10歳の壁を乗り越えるヒントを与えてくれるにちがいない。
投稿者プロフィール
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誰もが自分の個性や才能を生かして、望む人生を自由に生きられる社会の実現を目指しています。今まで教育に携わりながらコーチング、心理学、カウンセリング、占星学、学習法など、個人の成長や能力開発に関わることを学んできました。このブログで発信する情報が、自己理解や他者理解を深めるきっかけの1つになれば幸いです。
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