7月28日に行った研究会の記録。
筑波大学附属小学校4年生の弥延浩史先生の授業。
学習材は「ごんぎつね」。
本時は2時間目だったが、1時間目は夏休み前だったそうだ。
ごんぎつねを通読し、「読後感」をノートに書いたのが1時間目。
2時間目の本時の授業。
まず冒頭で作品の設定を確認した後、児童が一人ずつ「読後感」を発表していった。
「読後感」の条件は次の3つ。
①自分の気持ちを書く ②一言で書く ③理由を書く
※読後感は2つあったとしても1つにする。
先生がそれをすべて板書していく。プラスの読後感は上の段、マイナスの読後感は下の段というように分けている(プラスかマイナスかの判断はあくまで教師のイメージで)。理由はあとにして、とにかく一言ずつ児童が読後感を述べていった。中には「自分の気持ち」ではなく、人物の気持ちに近い子もいたので、その都度先生が「それは自分の気持ち?」と1つ1つ確認しながら進めていた。実際に出た読後感は次の通り。
・かわいそう(12人)
・成長したな
・ごめんね ※T「これは自分の気持ち?兵十の気持ち?」
・よかったね(2人)
・気づいたときはもうおそい
・かわったな
・あべこべだな
・やさしい(3人)
・ざんねん
・つらい ※T「これも自分の気持ち?」
その後、先生(T)と児童(C)のやりとりはこんな感じで続いていく。
T「一番きいてみたい読後感はどれ?」→C1の「あべこべだな」
C1「ごんの気持ちと実際の行動があべこべだと思ったから」
別のC「かわったな、と同じ?」
別のC「さいしょは、いたずらばかりしていたけど、最後は思いやりをもつようになったから」
T「ほかにもきいてみたい読後感はある?」→C2の「つらい」
C2「くりをくれたのがごんなのに殺してしまったから」
別のC「かわいそうと同じ?」
T「かわいそう」の理由は?
(兵十に対してかわいそうという子と、ごんに対してかわいそうという子、理由はちがう)
T「ほかにもつながっていそうなのはある?」
C「気付いたときにはもうおそい」→この理由に対して、ごんと兵十の気持ちは通じた、いや通じていない、で意見が分かれ始めた。
C「通じたけど・・・」
C「いや通じなかったけど・・・」
T「ここでみんなが揺れているということは問いになりそうだね」
T「まだきいていない読後感はある?」→C3「ごめんね」
C3 ごめんねと思った理由を発表する
T「まだ言い足りない人いる?」
C4「よかったね」の理由。最後に兵十に気付いてもらえたから。
T「同じ場面でも見方がちがうよね。そういうところは大切にした方がいいね」
T「では、どんな問いがつくれそう?」→4,5人のグループをつくってグループごとに問いをつくらせている。(5分程度)
このあと先生が、出た問いを整理(問いをつくるときの条件・・・文章中に必ず手掛かりがあるもの)していった。
①気持ちの変化で問いがつくれそう。
兵十の気持ちはどうだったんだろう? ごんの気持ちは?
②ごんの行動に関する問い
なぜ「つぐない」をしたの?
なぜわざわざかくれて行くの?
③二人の気持ちは通じ合ったの?
T「夏休み明けの次の時間に改めてみんなで整理して問いをつくろう! 解決するためには文章のどんなところに注目すればいい?」
C 行動、様子、会話文など
まとめ(授業を見た感想)
・弥延先生の「読後感」から問いをつくる実践は、一定の再現性がある。
指導案に記載されていた通り、初発の感想と比較してシンプルで、ズレが生じ、必要感が生まれるのがよい。
・教師が明確に単元のゴールをもつことで、質の高い「問い」を浮上させることができる。
今回の授業では、「新美南吉作品を読み比べさせたい」という単元終末のゴールに向かって(ここで教師が児童に示しているわけではない)「なぜごんがあんな形でつぐないをするのか?」はぜひ浮上させたい問いだったとのこと。また、「視点の転換」や「誰が語り継いだのか」を捉えるためには「兵十の気持ち」を問いとして必ず浮上させる必要があったとのこと。いかにして教師が「問いを浮上させる」→「誘導する?」かは熟練の技だといえばそうだが、教材研究に基づいた「この単元ではここを押さえたい」というものがないと、ただ拡散するだけであろう。(問いを浮上させる他の手だての例として、子供のノートやふりかえりから取り上げる方法もあるとのこと)ちなみに弥延先生は4~6年まで3年間この子供たちを受け持つことを見通して、物語文のどの教材でどの力をつけるか、という系統、カリキュラムはすでに出来上がっているとのこと。私たちも少なくとも1年間の系統を意識した上で、その単元で培いたい読みの力を明確にしておく必要があろう。
・「個人の問いは最後までもっておいていいよ」
読後感を書いたり理由などを話し合ったりして生まれた個々の問いは、たとえ「全体での問い」にならなかったとしても、最後までとっておかせることで、個々の読みも大事にしていた。
・「全員参加」がねらい
読後感から問いをつくる実践のねらいの一つは、全員参加を保証すること。弥延先生の言葉では「全国どの公立小学校でも実践できる」とのこと。もし一言で書くこともできない児童には、「ペアで考えさせる」「教師が個別に支援する」「友達が書いたものから選ばせる」などの手だてもあると。そして授業では全員が順番に発言(ここでは読後感のみ)していったことが印象的だった。最近はとかくICTで瞬時に視覚化・共有化することが多いが、児童が一人ずつ順番に発表していく間に生まれる「そうそう!」「(納得の)あ~っ」などのつぶやきが生まれる余白も大事だと思った。
弥延先生の「読後感から問いをつくる」実践、夏休み以降、一度実践してみたいと思った。
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