私たち人間が行動するときのシンプルな仕組みがあります。
私たちのすべての行動は、できる限りの「快楽」を得るため、または「痛み」を避けるためのどちらかによって生み出されます。「快楽」とは基本的な人間の欲求で、身体的、精神的に気持ちよさを感じたいという欲求です。快適、安心、楽しみ、自由、尊敬、愛、成長、成功、貢献などの欲求があてはまります。
「痛み」とは、人が避けたいと思う感情―不快感、恐怖、退屈、怒り、落胆、拒絶、失敗、無能力さ、孤独感などです。人それぞれ何を快楽・痛みととらえるかは異なりますから、それによって生み出される行動も人それぞれになりますが、脳はいつもできる限りの快楽を得て、できる限りの痛みを避けたいという目的をもっていることは同じです。
ダイエットを例に話をすると、過食することで生じる何か強い痛みの感情(例えば、自分に対する落胆)があるか、食事を制限することによって得られる何か大きな快楽(例えば、やり遂げたという自信や、体重が落ちて動きやすくなった快適さなど)があれば、目標(ダイエット)に向かっての行動は取りやすくなるということです。
「痛み」は短期的な目標達成には有効ですが、それよって生まれる行動は長続きしません。叱られて勉強しても長続きしないのはこのためです。ですから長期的な目標達成に必要なことは、適切な行動と快楽を結び付けることです。学習でいえば、学習すること自体が快楽(知的好奇心を満たすなど)となるのが理想でしょう。
痛みと快楽が生じた後の反応の仕方は、その人のもつ価値観や世界観によって異なります。「世界は安心できない場所だ」と思っている人は、痛みへ強く反応し、痛みから避け続ける人生を送り、反対に「世界はすばらしいところだ」と思っている人は、自分の得たいことをエネルギッシュに得ていく人生を送る傾向があります。
では、なぜそのような世界観の違いが生まれるのでしょうか?
脳の機能、遺伝、生育歴、その時置かれている環境など、様々な議論がありますが、答えの一つは幼少期の「セキュア・ベース」の有無だと言われています。「セキュア・ベース」とは心の安全基地のことで、「いつでも帰って来られる場所、安心できる場所」を意味します。ありのままの自分を愛されている、自分は存在していいんだ、ということを体感覚で得ている状態といってもいいでしょう。
「子供のやる気を育てるには、自己肯定感を高めること、自分を好きだと思える子供に育てることが大事」とよく言われますが、それにも通じますね。
(このセキュア・ベース、幼少期を過ぎて大人になってからでも様々な形で形成できることは付け加えておきます。)
<参考>
フォレスト出版「達成の科学」「行動の科学」
(いずれもマイケル・ボルダック著 吉田裕澄 訳)
投稿者プロフィール
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誰もが自分の個性や才能を生かして、望む人生を自由に生きられる社会の実現を目指しています。今まで教育に携わりながらコーチング、心理学、カウンセリング、占星学、学習法など、個人の成長や能力開発に関わることを学んできました。このブログで発信する情報が、自己理解や他者理解を深めるきっかけの1つになれば幸いです。
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