小学校学習指導要領(平成29年告示)に示された「深い学び」とは? 上智大学・奈須正裕先生の言葉③

新学習指導要領の重要キーワードである「主体的・対話的で深い学び」

これは子供のどんな学びの姿を表しているのだろうか?

本ブログでは、数回にわたって上智大学・奈須正裕先生の発言を紹介している。

 

3回目の今回は最もイメージしにくいと言われる「深い学び」について。

 

(引用元は『国語授業における「深い学び」を考える -授業者からの提案- 全国国語授業研究会 筑波大学附属小学校国語研究部編著(東洋館2017年8月初版)』

 

深い学びとは?

深いは一番シンプルで、要するに意味的な処理になれば深いと。意味が発生すれば、それは深いのだと。意味が発生するというのはどういうことかというと、どういう形でもいいから子供が持っている知識や経験と、今日学んでいることの間に関連が見えるという話。

子供からすれば、見聞きしたり経験したりして既にそこそこ知っていることと今日のことが繋がってくると「あ、それね」と当たりがつく。「分かった」というのはそれ。

深い学びというのは色々な意味で知識が関連づいてネットワーク化するとか、構造化するとか、そういうことだと素朴に考えればいい。

 

では、関連づくとは?

教科の授業とは、子供が持っている整理されていないインフォーマルな知識を系統立てて順序立てていく営みで、いくつかの柱ごとに、これまでバラバラと学んだり見聞きしたことが位置づき構造化してくるのが関連づけということ。

これまで生活の中でバラバラと得てきた知識が教科の系統の中にそれぞれ統合化され、より整理されてきて、世界が見やすくなってくるということ。

教科の勉強としてやってきたもの同士が結びついてくるということ。(前の単元で勉強したことと次の単元で勉強したことが発展的に。領域を超えて。読むことと書くこと。教科を超えてなど)

そういうことをしていると、一つの教科の中で実は似たようなことを繰り返しやっていることに子供が気づいてくるし、なぜこの教科ではこういう似たようなことをやるのかということが、その教科の特性とか教科の見方・考え方とか、教科の本質に当然なってくるはず。そういうことに子供が気づくように授業を構成する。そういったことを子供が学び取ることに任せていくと、なかなか学べないので、もっと明示的にはっきりと指し示して教えるということ。

教科の言葉、 教科ごとのキーワードとは、その教科で繰り返し出てきて、それによってその教科の見方・考え方を子供が捉え、学びを進めるのに有効な言葉のこと。その系統や構造が見えてきて子供にも見えたり分かったり、使えるように指導するという系統的な指導が非常に大切であり有効。

それはガチガチに教え込むのではなくて、子供がその教科を学ぶ上で鍵になる概念、本質的な問いとか、永続的な理解とか、ビッグアイデアと呼んできたものだが、それらをはっきり伝えて、それを使わせて次の学びをすることによって、子供は当たりがつき、自分はこうしたいというめあてをもって学ぶことができるので、子供にとっても結局ば主体的になる。武器がないと学べないので、それをきちんと与えるのが大事。

そういうことを繰り返す中で、この教科ではこれが本質的に大事なんだとか、この教科はこの着眼点とかポイントを押さえておけば概ねできるんだとか、そういうことが見えてくる。その意味で、教科の中にはいつも繰り返して現れてくる共通性と、領域によってとか、単元によってとか、教材によって様々に変化してくる独自性がある。その共通性と独自性の両方に子供が気づいて、また色々な学びを共通性と独自性という視点で見ようとする構えを作ることで、将来自分で学んで行ける、いわゆる自立した学習者になっていくみたいなイメージ。

そう考えると深い学びというのは実は一番シンプルで、要するに関連づけばいいということ。この教科はこういうことをやるという見通しが持てるようになること。

 

国語科では?

国語の大きな問題は学習内容がはっきりしないということ。いい読みの経験を繰り返していけば読解力がつくというのはあまりにも楽観的過ぎて、経験を積み上げていく中で、その経験が何であったかという意味が、ある程度帰納され、抽象化され、概念化され、道具化しないと、実は読解に限らずだが、学力にならない。

その時にいい経験を繰り返しても、経験の意味を概念化できる子供とできない子供がいる。概念化が進むとその教科の学びを俯瞰的に見通せる。するとその教科の本質が把握できるのでその教科が得意になる。現状では自力で概念化できる子とできない子がいる。これを偶然に委ねて放置しない。その教科で何を教えるかではなく、その教える内容を貫いている軸それ自体を子供にもそれと分かるように明示的に指導することが大切。

(太字は、私が施したもの)

 

奈須先生は別の著書「資質・能力と学びのメカニズム」(東洋館出版)で、深い学びを実現させるための授業づくりの3つの原理として「有意味学習」「オーセンティックな学習」「明示的な指導」を挙げ、詳細に解説されている。こちらも併せて参照されたい。

 

 

 

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masaki
誰もが自分の個性や才能を生かして、望む人生を自由に生きられる社会の実現を目指しています。今まで教育に携わりながらコーチング、心理学、カウンセリング、占星学、学習法など、個人の成長や能力開発に関わることを学んできました。このブログで発信する情報が、自己理解や他者理解を深めるきっかけの1つになれば幸いです。
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